アナフィラキシーは重篤な全身性の過敏反応であり、通常は急速に発現し、死に至ることもあります。アレルギー反応によって起こるものが大多数ですが、非免疫学的な機序によって起こるものもあります。
アナフィラキシーの診断
以下の2つの基準のいずれかを満たす場合、アナフィラキシーである可能性が高いと言えます。
皮膚、粘膜、またはその両方の症状(全身蕁麻疹、掻痒、紅潮、口唇や舌の腫脹など)が急速に発症して、なおかつ下記の3つ(気道/呼吸症状、循環器症状、消化器症状)のうち少なくとも1つ以上の症状を伴うもの
典型的な皮膚症状を伴わなくても、その人にとってアレルギー症状を起こすもの、またはアレルギー反応を起こす可能性が極めて高いものに暴露された後、血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状が急速に発症したもの
疫学について
日本では、アナフィラキシーの既往があるのは小学生0.6%、中学生0.4%、高校生0.3%と報告されています。
アナフィラキシーの発生率は増加傾向にありますが、アナフィラキシーによる死亡率は大きく変化していません。アナフィラキシーによる死亡原因で最も多いのはハチ刺傷です。
アナフィラキシーの原因
アナフィラキシーの原因特定は、発症時から遡る数時間以内における飲食物、薬剤、運動、急性感染症への罹患、精神的ストレス、アレルゲン物質への暴露、経過に関する詳細な情報に基づいて行われます。原因として頻度が高いのは食物、医薬品、昆虫毒です。
原因となる食物で頻度が多いのは、鶏卵、乳製品、小麦、木の実類です。
近年、木の実類によるアレルギー、アナフィラキシーが増えており、特にくるみによる反応が増えてきています(ピーナッツよりも多いです!)。
アナフィラキシーを疑う症状
下記の症状が一つでもあれば、アナフィラキシーの可能性を考えて迅速な対応が必要です。
- 我慢できない強い腹痛
- 繰り返す嘔吐
- 失 禁
- 強い咳が続く
- 犬吠様咳嗽
- 明らかな喘鳴
- 呼吸困難
- のどや胸が締め付けられる
- 声がかすれる
- チアノーゼ
- 呼吸停止
- ぐったり
- 意識消失
アナフィラキシーの治療
【初期対応】
アナフィラキシーは秒単位で症状が進行します。したがって、迅速な対応が必要です。
患者さんを横にして、足を少し高めにしてあげましょう。救急車を呼びましょう。
エピペン®を処方されている人であれば、ためらわずに打ちましょう。
アドレナリン自己注射薬(エピペン®)
アナフィラキシーは急速に進行します。
この進行を抑えられるのはアドレナリンという注射薬のみです。アナフィラキシーの既往がある人には自己注射型のアドレナリン(エピペン®)が処方されていることがあります。
万が一、アナフィラキシーになった時、命を救ってくれるのはエピペン®です。重症のアナフィラキシーの場合、その予後を左右するのは症状出現からエピペンを打つまでの時間によると言われています。普段からエピペンの打ち方をよく学習し、必ず常に携行するようにしましょう。
当院では食物アレルギーなどでアナフィラキシーの既往がある方を中心に、必要な方には積極的にエピペン®を処方しています。
初めて処方する方には、時間をかけて使用方法や使用のタイミング、注意事項をご説明します。またすでに処方を受けている方でも、定期的な復習を兼ねて再指導を行っています。
命を守るための大切な薬です。しっかり学んで、適切に使用できるようにしましょう。