食物アレルギーなら京都市西京区の小児科・アレルギー科かわむらクリニック

小児科・アレルギー科 かわむらクリニック
ALLERGY

食物アレルギー

食物アレルギーとは
食物アレルギーとは

食物アレルギーとは

特定の食品を摂取した際に免疫系が過剰に反応して起こるアレルギー反応のことを指します。
免疫系は通常、体内に侵入する異物や細菌、ウイルスなどの病原体といった、体にとって有害なものを攻撃するために機能していますが、食物アレルギーの場合は誤って本来体にとって有益な食物の成分を異物とみなし、攻撃してしまうのです。

食物アレルギーの考え方

食物アレルギーの考え方

アレルギー疾患の治療の基本は、アレルゲンに近づかないこと(アレルゲンの除去)です。
食物アレルギーも以前は疑わしい食べ物はすべて除去するように指導されることもありました。
しかし、最近は考え方が変わってきています。
原因食物は安全のために除去することが原則ですが、「将来的に耐性獲得が期待できる食べ物(鶏卵、牛乳、小麦、大豆など)については、症状を誘発しない範囲の量、または加熱・調理により反応性が低下して摂取できる範囲を見極めて、摂取する指導を行うことを目指す」という考え方に変わってきています。

つまり"正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去"が食物アレルギー診療の原則と言えます。
やみくもに除去するのではなく、ほんの少しの量でも継続的に摂取を行うことで、食べられる量が増えていく可能性があることが分かってきました。

鶏卵アレルギーを例に考えてみましょう。
一言で鶏卵アレルギーと言っても、その程度は人によって様々です。
Aさんはゆで卵の黄身1口でアレルギー症状が出るのに、Bさんはゆで卵は1個食べられてプリンを半分食べると症状が出ます。
どちらも鶏卵アレルギーですが、その人その人によって食べられる量が違います。ですから、アレルギーがある人全員に同じ治療・指導をするのはよろしくありません。個人個人にあったオーダーメイドな対応が必要になります。

仮にアレルギーだとしても、まったく食べられないということは珍しいです。
その人にとって症状が出ないぎりぎりの量を"閾値"と言いますが、この閾値の範囲内で継続的に摂取を行うことで、閾値が徐々に上昇し、将来的に十分量を食べられるようになったり、重度のアレルギーの場合、仮に少量を誤食しても強いアレルギー反応が出なくなるようにできるかもしれません。

食物アレルギーの症状

食物アレルギーによって誘発される主な症状は以下のようなものがあります。
多くは即時型(摂取して2時間以内)反応ですが、一部に非即時型(2時間以上経ってから症状が出現する)も含みます。

各臓器のアレルギー症状と症状出現頻度

食物アレルギー症状が出た際の対処

まずはどこに症状が出ているかよく観察しましょう。出ている症状が皮膚症状のみであれば、そんなに焦る必要はありません。
しかし、食物アレルギーの場合、時間の経過とともに症状がどんどん増えてくることがありますので、油断は禁物です。

皮膚症状以外の症状(咳、ゼーゼー、嘔吐、腹痛、ぐったりなど)が出ている場合は、別表を参考に迅速な対応が必要です。
病院を受診する場合、余裕があれば、その時に食べたもの(種類や調理形態)、食べてどれくらいで症状が出始めたかなどの情報をメモして教えていただけると診断のうえで大変助かります。食品の包装に原材料が載った表がありますので、それを写真に撮っておくのもひとつの方法です。

「初めて食べるものは少量から食べさせる」のが基本です。
少量が大丈夫であれば、次の機会から無理のない範囲内で増量していきます。また1回の食事で初めて食べるものは1品だけにしましょう。

いずれも、症状が出た時には「焦らず、冷静に」が大切です。(でも、これが1番難しいです...)
症状が出た時の対応として、東京都が監修した「食物アレルギー緊急時対応マニュアル」が非常に分かりやすくまとめられています。

各臓器のアレルギー症状と症状出現頻度

食物アレルギーの診断と検査

食物アレルギーの治療においては、アレルギー症状を誘発する食品を特定することが大切になってきます。
原因食物を特定していく上では、まずは問診で症状が誘発された際の食事内容などを確認することが重要になってきますので、丁寧にヒアリングをしてアレルギー反応が出た原因の確認を進めていきます。
問診で得られた情報を元に、当院では、診断や安全摂取可能量の確認のため食物経口負荷試験を行っています。また補助検査として血液検査や皮膚検査も行っています。

大事なことは、食物アレルギーの診断は問診や食物経口負荷試験、アレルギー検査などの結果を総合的に判断して行われるということです。
血液検査や皮膚検査といったいわゆるアレルギー検査で陽性が出たからといって、必ず食物アレルギーというわけではありません。
アレルギー検査が陽性でも、ちゃんと食べられる人はたくさんおられます。正しい診断に基づくことが大切です。

アレルギー検査陽性≠食物アレルギー

  • 問 診

    正しい食物アレルギーの診断に近づくためには、丁寧な問診がとても大事になります。

    食物アレルギーを疑う症状が出た時のことを詳しく伺います(何を食べたか、そのくらいの量を食べたか、何分くらいで症状が出たか、どんな症状か、どんな対応をしたか、何分くらいで症状が消えたか...など)。

    問診
  • 血液検査

    食物アレルギーでは、体が食べ物を有害なものと勘違いして攻撃するための武器(特異的IgE抗体)を作っています。

    このIgE抗体の量を測る検査です。
    鶏卵、乳、小麦に対するIgE抗体は比較的信頼度が高いですが、他の食べ物に関してはあくまでも参考程度です。

    血液検査
  • 皮膚検査

    プリック検査とも言います。当院では被疑食品を専用の針で刺して、それをさらに皮膚に刺す"prick-to-prick"という方法で行います。
    特に乳児では血液検査よりも信頼度が高いこともあります。

    また血液検査では項目が無くて調べられないものでも、プリック検査なら現物をお持ちいただければ何でも調べることができます。

  • 食物経口負荷試験

    実際に食べ物を食べて、アレルギー症状が誘発されるかどうかをみる検査です。
    食物アレルギーの診断や安全に摂取できる量(閾値)を確認するために行われます。
    アレルギー症状を起こすリスクがありますので、医師の管理下で行う必要があります。

    当院では専用の食物経口負荷試験室を有し、経験豊富なアレルギー専門医の管理のもとで負荷試験を受けることが可能です。
    100%安全な検査というわけではありませんが、食物アレルギーの診断や経過をフォローしていくうえで、大変重要な検査になります。
    詳しくお聞きになりたい方は、お気軽にお声がけください。

食物アレルギーの治療方針

日本小児アレルギー学会の診療ガイドラインで示されている通り、当院でも「正しい診断に基づいた、必要最小限の除去」をポリシーにしています。
今は1人前の量を食べられなくても、少量からゆっくり継続的に摂取を行うことで、将来的に食物アレルギーを克服できるようになるかもしれません。

  • 必要最小限の除去

    ひと昔前は、アレルギー検査で陽性のものは全て除去するよう指導されていることがよくありました。しかし、その結果さらなる食物アレルギー患者の増加を生み出すことになりました。仮に食物アレルギーがあっても、まったく食べられない人は少ないです。
    たとえ微量でも継続的に摂取を行うことで、体が段々とその食べ物を敵であるとみなさなくなる可能性があります。
    こうして閾値が上昇していって、最終的には寛解を目指すことも可能であることが分かってきました。

  • スキンケアの徹底

    皮膚の乾燥や湿疹を放置していると、皮膚のバリア機能が低下します。
    バリア機能が低下した肌から異物が体に取り込まれ、それを敵とみなしてIgE抗体を作ってしまうことを経皮感作と言います。経皮感作によって食物アレルギーのみならず種々のアレルギー疾患につながる可能性があります。
    湿疹をすばやく治してスキンケアを徹底することで、食物アレルギーが予防できるのではないかという調査結果も報告されています。

  • 食べられる範囲は自己判断せず、
    定期的に負荷試験で確認を

    アレルギーがあっても完全除去はしないほうがいい、とは言いつつも自宅で勝手に食べ進めていくのは大変危険です。
    気づかずに閾値を超えてしまって、命の危険にさらされてしまうことだってあり得ます。
    きちんと閾値を知って、その範囲内(症状が出ない範囲内)で食べることが大切です。

    閾値内での摂取を続けることで、閾値が徐々に上昇すると考えられます。
    当院では数か月ごとに負荷試験を行い、閾値の上昇を確認します。閾値が上昇するということは食べられる範囲が増えるということですから、食べることがより楽しいものになると思っています。

当院の方針

食物アレルギー診療ガイドラインに則り、必要最小限の除去を基本的な考え方としています。
もちろん重度の食物アレルギーの方に対しては完全除去を指示することもありますし、必要に応じて専門病院への紹介も行います。
また、いわゆる"経口免疫療法"と呼ばれる治療は、現時点では当院では行いません。

食物アレルギー診療は2010年代から、それまでの「疑わしきは除去」から現在の「必要最小限の除去」に考え方が大きく変わりました。
正しい診断、正しい理解に基づいて、安全に摂取していくことが大切であると考えています。