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小児科・アレルギー科 かわむらクリニック
ALLERGY

アトピー性皮膚炎

皮膚の構造と働き
皮膚の構造と働き

皮膚の構造と働き

アトピー性皮膚炎のお話をする前に、正常なお肌(皮膚)の働きを考えてみましょう。
ひとことで皮膚といっても、角層・表皮・真皮と分かれていて、その中にはさらにたくさんの細胞がひしめき合っています。
皮膚の働きには色々ありますが、その中でも大切なのが「バリア機能の保持」です。

バリア機能には、体の外からウイルスやばい菌などの病原体やダニなどのその他異物が中に入ってこないようにする働きと、体の中から必要な水分が外に出ていかないようにする働きがあります。このバリア機能が低いと、外から刺激が入りやすくなりますし、また水分も出ていきやすくなります。
そして特に生まれてすぐの新生児や乳児はおとなに比べて、このバリア機能が弱くすぐに壊れてしまいます。

皮膚のバリア機能が壊れると、乾燥しやすくなって痒くなります。痒くて掻くと皮膚の中にさらに痒みを引き起こす成分が出てきます。そしてまた掻く...、こうして痒みの悪循環に陥ります。
このように皮膚がボロボロになって傷ついた状態を湿疹と言いますが、その代表がアトピー性皮膚炎です。

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎の原因はさまざまで体質や遺伝子の変異、環境因子などがあり、時にはそれらが複合的に重なって発症します。
では先ほど述べた皮膚のバリア機能が破綻した状態の何が悪いのでしょうか。
一つはとにかく痒いので、不快です。程度が強いと寝られないくらいになります。そうしていわゆる生活の質(Quality Of Life ; QOL)の低下につながります。
また子どもの場合、夜間にしっかり寝られないと成長ホルモンの分泌が不十分になって将来的に身長が伸びにくくなることもあります。

次に、皮膚がぼろぼろだとばい菌や異物が皮膚を通して体に入ってきやすくなります。ばい菌が入ってくれば感染を起こしやすくなります。異物が入ってきた場合はどうでしょう。
湿疹のあるボロボロの皮膚の表面には樹状細胞という免疫の細胞が、異物(細かい食べ物のカスやダニ、花粉、ほこり、ペットの毛など)が入ってくるのを手ぐすねを引いて待っています。

この細胞に捕まった異物は体に取り込まれ、攻撃の対象(アレルギー反応を起こすべき対象)と認識され、体はそれぞれの異物に対応したIgE抗体を作り出します。このようにボロボロの皮膚を通して異物が体に入りIgE抗体を作ってしまうことを"経皮感作"と言います。

こうして経皮感作が起きてしまうと、次に同じ異物、例えば卵が口から入ってきて腸から吸収され体内に取り込まれると、食物アレルギーの症状を起こすことがありますし、花粉が鼻の粘膜から体に入ってくると花粉症の症状を起こすこともあります。つまり経皮感作の結果、いろいろなアレルギー疾患を発症する原因になることがあります。
なので、「とにかく湿疹は作らないようにする、湿疹ができてしまったら速やかに治す」ことが大切です。

湿疹が放置されていた期間と食物アレルギー患者の割合

湿疹を放っておく期間が長いほど、
食物アレルギーを発症する割合が高くなる

湿疹を予防するためには生まれてすぐからの保湿が効果的であると考えています。
特にハイリスク児と呼ばれる、ご両親の少なくともどちらか一方にアレルギー疾患がある方のお子さんや、ご兄弟にアレルギー疾患があるお子さんは特に保湿が大切です。
ハイリスクのお子さんに関しては、しっかり保湿を行うことで生後32週までのアトピー性皮膚炎の発症率を32%軽減できたという報告があります。
(下図参照、ただし使用する保湿剤の種類や頻度によって結果は異なるようです。詳しくお知りになりたい方は、お気軽にお声がけください。)

アトピー性皮膚炎を発症してない割合

ハイリスク児を対象に生後1週間より

  • 介入群:毎日保湿乳液を1日1回以上塗布
  • 対象群:乾燥が目立つ部位のみワセリン塗布

を行ったところ、生後32週までの
アトピー性皮膚炎の発症率は
対象群にくらべ
介入群で約32%低かった。

一方、ハイリスクでないお子さんの保湿剤によるアトピー性皮膚炎予防効果は証明されていません。
しかしお肌をつるつるすべすべに保つことは、肌触り良く本人にとっても親御さんにとっても気持ちがいいものなので、当院ではハイリスク児もそうでない児も徹底的な保湿をお勧めしています。
さらにもっとも最近(2023年5月時点)の報告では、徹底的なスキンケア/アトピー性皮膚炎の治療が食物アレルギーの予防つながる可能性を示した報告もあります。

アレルギーマーチを見ても分かるように、アトピー性皮膚炎はすべてのアレルギー疾患の始まりになり得ます。アトピー性皮膚炎を予防することで、その後に引き続く食物アレルギーや気管支喘息を防いでいきましょう。そのためには繰り返しになりますが、保湿が大事かなと思います。

アトピー性皮膚炎の治療

アレルギー疾患の症状は、いずれも慢性的な炎症からくるものが多いです。ですから、すぐにすっきり治すことが難しいです。
でも根気よく粘り強く正しい治療法で治療をすれば必ずよくなりますので、一緒に頑張っていきましょう。

まず最初にアトピー性皮膚炎の治療目標を確認しましょう。

アトピー性皮膚炎の第一ゴールと最終ゴール

アトピー性皮膚炎の治療はいかに痒みをコントロールして、掻かないようにするかです。
アトピー性皮膚炎の治療は大きく3つに分けられます。

  • 薬を使って、湿疹を治す
  • スキンケアをして皮膚のバリア機能を維持する
  • 湿疹の悪化因子を避ける

では順番に見ていきましょう。

  • 薬を使って、湿疹を治す

    一般的な標準治療の場合、炎症を抑えるためにまず最初にステロイド外用剤が使用されます。
    ステロイドとは副腎皮質ホルモンという、私たちの体の中にある副腎という臓器から作られる抗炎症作用をもつホルモンで、これを薬にしたものです。
    湿疹の程度や部位に合わせて適切なステロイドを決められた回数塗ります。

    最初は湿疹があるときにステロイドを塗り、湿疹がなくなったら保湿剤だけにします。この方法をreactive(リアクティブ)療法といいます。しかし、中にはしっかりreactive療法を行っていても、ステロイドをやめてしばらくたつとすぐにまた湿疹が出てきてしまう人もいます。
    このような場合には、下の図にあるようにproactive(プロアクティブ)療法という方法を行います。

    薬を使って、湿疹を治す

    proactive療法は肌がつるつるになった後もステロイド外用剤をゆっくり減らしながら塗り続けて、再燃を予防する方法です。
    ステロイド外用剤のほかにもタクロリムス軟膏やJAK阻害剤、PDE4阻害剤などといった新しい外用薬や内服薬、注射薬が次々と開発されています。
    寛解導入はステロイド外用剤で行いますが、維持の期間はステロイド外用剤以外の抗炎症外用薬を使うこともあります。
    アトピー性皮膚炎の治療の選択肢は広がってきています。これらの薬をうまく組み合わせて、適切な抗炎症療法を行うことが大切です。

  • スキンケアをして皮膚の
    バリア機能を維持する

    ステロイド外用剤などによる抗炎症治療と並んで大事なのが保湿剤によるスキンケアです。
    ステロイド外用剤を減らしていくには、毎日しっかり保湿剤を塗ることが大事です。保湿剤には傷んだ皮膚の表面の細胞を修復する作用がありますので、毎日こまめに塗るようにしましょう。

  • 湿疹の悪化因子を避ける

    湿疹を悪くするものはたくさんあります。ダニやほこり、汗、紫外線、ペットの毛、ストレス、乾燥、石鹸の洗い残しなどです。
    これらを避けるために、こまめな掃除、規則正しい生活、毎日の入浴が大事になってきます。

アトピー性皮膚炎の痒みは本当につらいです。
「湿疹を作らない、湿疹ができたらすぐに治す」ことが大切です。
お肌のことで困ったことがあれば、是非当院にご相談ください。