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- 2025.02.27
噴霧スプレーで感染予防!最新研究が示す新しい可能性とは?

WHO(世界保健機構)が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染のパンデミックを宣言してから間もなく5年。一時のパニックは過ぎ去り、日常生活の中でSARS-CoV-2と共存する時代に移行しているように感じます。
でも病原体はSARS-CoV-2だけではありません。私たちの周りにはインフルエンザウイルスやRSウイルス、ライノウイルス、溶連菌・・・・・数多の病原体がうようよ。
感染を予防するためには手洗いやうがい、マスク装着など様々な方法がありますが、よりしっかり防御できる方法は無いものでしょうか。
今回の論文
今回取り上げるのはAdvanced Materialsという材料科学を取り扱う雑誌に掲載されている論文です。
2025年2月に発表された論文ですが、病原体の気道感染を予防するための最新の研究に関する興味深い報告がありましたので共有したいと思います。
"Toward a Radically Simple Multi-Modal Nasal Spray for Preventing Respiratory Infections"
Adv Mater . 2024 Nov;36(46):e2406348.
はじめに
さて今日の主役はPCANS(Pathogen Capture and Neutralizing Spray:病原体捕捉中和スプレー)と命名された鼻腔への噴霧スプレーです。このスプレーを使用した感染症対策について詳しく見ていくことにしましょう。
先ほども述べたように、これまでの感染対策といえば、手洗い・うがい・マスク・ワクチンが一般的でした。
しかし、今回の研究では、鼻にスプレーをすることで、ウイルスや細菌の侵入を防ぐ新しいアプローチが紹介されています。
「そんなことで本当に効果があるの?」と思われる方もおられるでしょう。
そこで、これからPCANSの仕組みや研究結果、ワクチンとの違い、安全性について解説していきます。
そもそも感染症はどうやって広がる?
感染症の予防を理解するには、まず病原体(ウイルスや細菌)がどのように体に入るのかを知ることが大切です。
主な感染経路は以下の3つです。
- 飛沫感染(くしゃみ・せき・会話で飛んだ飛沫から感染)
- 接触感染(ドアノブ・電車のつり革などに触れて感染)
- 空気感染(空気中を漂うウイルスを吸い込んで感染)
特に、鼻や口はウイルスや細菌が侵入しやすい場所です。
ここに強固なバリアを作れば、感染リスクを大幅に減らせるのではないか、というのが今回の研究の着眼点です。
噴霧スプレー(PCANS)の仕組みとは?
PCANS(Pathogen Capture and Neutralizing Spray)は、病原体の侵入を防ぐために開発された鼻スプレー型の感染予防アイテムです。
これまでのワクチンとは違い、「免疫をつける」のではなく、「病原体を物理的にブロックする」という方法で感染を防ぎます。
<PCANSの3つの働き>
① 病原体をキャッチして体内に入れない
ウイルスや細菌が鼻の粘膜に付着する前に、PCANSの成分が病原体をキャッチし、体内に侵入しないようにします。
② 鼻の粘膜にバリアを形成
PCANSを噴霧すると、鼻の表面に薄いフィルムが形成され、病原体が粘膜に付着しにくくなります。
③ ウイルスや細菌を中和
スプレーには病原体を中和する成分が含まれており、吸い込んだウイルスをすぐに無害化する効果があります。
このように、PCANSは鼻の入り口で病原体をブロックし、体内に侵入するのを防ぐことを目的としています。
従来の鼻スプレーは病原体の中和だけとか、バリア形成だけといった単一の作用機序でしたが、PCANSは多機能性を有しているのが特徴です。
研究結果からわかったPCANSの効果
実際の研究では、PCANSを使うことで以下のような効果があることが確認されました。
・ インフルエンザウイルス(H1N1)への効果
・新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の侵入を防ぐ
・ウイルス量が1/10000以下に減少することを実験で結果
通常の感染対策ではウイルス量を1/10~1/100程度に減らすのが限界でしたが、PCANSは1/10000以下に減少させており、非常に強力な効果を持つことがわかります。
特に、感染症のリスクが高い医療現場や満員電車などの人混みでの使用が推奨される可能性が高いと言われています。
ワクチンとの違いは?併用は可能?
「ワクチンがあればスプレーは不要なのでは?」と考える方もおられるかもしれません。
しかし、PCANSとワクチンは根本的に役割が違うため、両方を併用することでより高い効果が期待できます。
このように、PCANSはワクチンの代わりではなく、「追加の予防策」として有効なのです。
安全性について:本当に使って大丈夫?
研究では、PCANSは食品や化粧品にも使われる成分を元に作られているため、安全性が高いとされています。
また、以下の点でも安全であることが確認されています。
・長時間使用しても鼻の粘膜にダメージを与えない
・繰り返し使用しても副作用がほぼない
・体内に吸収されず、外部で効果を発揮する
そのため、子どもや高齢者にも安心して使用できる可能性があります。
今後の実用化の可能性は?
現在、PCANSは臨床試験が進められており、将来的に市販される可能性が高いと考えられています。
特に、以下のような場面での活用が期待されています。
電車・バスなどの公共交通機関
学校や職場での感染対策
病院・介護施設での使用
ワクチン接種が難しい人の代替手段として
日本でも実用化が進めば、新たな感染対策の選択肢として、多くの人にとって役立つ可能性があります。
まとめ:PCANSで新しい感染予防を!
PCANSは鼻スプレーで感染予防できる画期的な技術
病原体をキャッチし、侵入を防ぎ、中和する
ワクチンと併用することで、より強力な感染対策が可能
安全性が高く、繰り返し使用できる
今年は大阪で万博が開催され、国外からも多くの人が来日することが予想されます。
京都を訪れる人も多いでしょうし、ただでさえインバウンドであふれている街がさらに混み合うことは想像に難くありません。
必然的に感染症のリスクは高くなるでしょう。SARS-CoV-2のようなパンデミックはもうこりごりです。
いざという時のために、今回紹介したような新しい感染予防の一手が早期に実用化されるといいですね。