- アレルギー
- 2025.09.28
アトピー性皮膚炎を理解しよう②

前回からの続きです。
アレルギーマーチ
"アレルギーマーチ"という言葉をご存知でしょうか。
アレルギー体質を持って生まれた子は、年齢によって様々なアレルギー疾患が形を変えて現れるというものです。
このアレルギーマーチのスタートは絵にもあるようにアトピー性皮膚炎です。
つまりアトピー性皮膚炎がその後に続くアレルギー疾患の原因になっているかもしれません。
なぜアトピー性皮膚炎が様々なアレルギー疾患の原因になるのでしょう?
経皮感作
ここで出てくるのが「経皮感作」という考え方です。これ、かなり重要な概念です。
20数年前、イギリスのLack博士が湿疹があるとピーナッツアレルギーが多い、またピーナッツオイルを保湿剤として塗布している人にピーナッツアレルギーが多いことに気づきました。
その後、この考えを元に2008年に"Dual Allergen Exposure Hypothesis 二重抗原暴露仮説"という現在のアレルギー疾患を考えるうえで無くてはならない仮説を提唱しました。
この仮説の内容は「経口からの早期かつ十分な暴露は免疫寛容を誘導し、皮膚バリア機能が破綻している状態での経皮的な抗原侵入は感作を成立させやすい」というものです。
図は国立成育医療センターでの研究結果ですが、湿疹罹病期間が長いほど食物アレルギーの発症リスクが増えていくことが分かります。湿疹を11か月放置すると、食物アレルギーの発症率は100%になっています!!
つまり、湿疹をほったらかしにしているとその後食物アレルギーなどのアレルギー疾患を発症しやすくなるということです。
私が普段外来で口を酸っぱくして「湿疹はさっさと治しましょう」と言うのはこのためです。湿疹を放置していいことなんて何一つありません。タバコと一緒で、百害あって一利なし!!一刻も早く断ち切るのがお勧めです。
日頃からの丁寧な保湿と、湿疹ができたときは素早くステロイド。これに尽きると思います。
アレルギーの予防
私の大好きな2014年の堀向先生の研究では、徹底的に保湿を行うことでアトピー性皮膚炎の発症を32%減らすことができました。残念ながら先生の研究では、感作の割合を有意に減らすことはできませんでしたが、その後2023年に国立成育医療センターから「アトピー性皮膚炎の赤ちゃんに対して、ステロイドを用いて徹底的に湿疹のコントロールを行ったところ、生後7か月時点での鶏卵アレルギーの割合が有意に減少した」と報告されました。
これはかなり画期的な報告で、要はアトピー性皮膚炎(湿疹)を予防すれば、その後に続くアレルギー疾患を予防しうることを証明した研究と言えます。さらに言えば、保湿をしっかり行うことで、様々なアレルギー疾患の予防が可能である(アレルギーマーチの進行を止めることができる)ということになります。
なので皆さん、保湿は早い段階から毎日しっかり行いましょう。
保湿剤とアトピー性皮膚炎の予防に関しては、堀向先生の研究以降様々な報告がなされており、肯定的/否定的な意見が様々ありますが、堀向先生が仰るように保湿成分をしっかり含んでいる保湿剤を1日2回たっぷり塗るのがいいのではないかと思います。
アトピー性皮膚炎とは
では、ここからアトピー性皮膚炎についてより深くみていきましょう。
アトピー性皮膚炎は、「増悪と寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義されます。
"寛解と増悪を繰り返す"と"掻痒"がキーワードになります。
アトピーはとにかく痒い。逆に言えば、痒みが無ければそれはアトピー性皮膚炎ではありません。
年齢によって痒みや湿疹の好発部位は変わります。
先ほど挙げた、繰り返すことと痒みがあることがアトピー性皮膚炎の特徴ですが、もう1つ特徴があります。それは左右対称性であることです。
つまり、アトピー性皮膚炎の場合、右ひじに湿疹があれば必ず左ひじにも湿疹が存在します。
さてアトピー性皮膚炎の患者さんは普段どんなことで悩んでいるのでしょうか?
以下のような報告があります。
様々な悩みがありますが、1番はやはり痒みで9割以上の患者さんが悩んでおられます。
ではなぜアトピー性皮膚炎は痒いのでしょうか?
アトピーは痒い
少し専門的な図になりますが、痒みが伝わる経路を示しています。
皮膚を掻くなどの刺激が入ると、その刺激は末梢神経を通って脊髄に入り大脳に伝えられ痒みとして自覚されます。
この痒みの伝達経路とは別に「JAK-STAT経路」という経路が存在します。このJAK-STAT経路は先ほど出てきた痒みを伝える経路の一番最初、末梢神経のスタート地点に存在します。
この経路ではある特定の物質(サイトカインというタンパク質)が刺激となって反応が進み、痒みを増幅させる遺伝子を発現します。
アトピー性皮膚炎では先ほどの図にも載っていますが、IL-31(インターロイキン-31)というサイトカインがたくさん発生しており、これがJAK-STAT経路を刺激することで痒みの伝達が増強されてしまいます。
皮膚のバリア機能が壊れているとそれ自体痒みの原因になります。痒いので掻くと、IL-31が増えます。するとさらに痒みが増強されて、また掻く、その結果痒みがさらに増強される、という負のスパイラルが完成して、湿疹が治らないということになります。
痒みによる影響
アトピー性皮膚炎はとにかく痒い。
そしてこの痒みが、様々な弊害を引き起こします。
痒みが強いとなかなか眠ることもできません。
慢性的な睡眠不足となり、その結果成長ホルモンの分泌が不十分で低身長、低体重に繋がります。
また精神的な発達にも影響を及ぼしAD/HD(注意欠陥多動性障害)やASD(自閉症スペクトラム症)の発症率が上がると報告されています。また、アトピー性皮膚炎の重症度に応じてうつ病の発症率とも相関してくるようです。
痒いだけではすまされないアトピー性皮膚炎。
やはり放置せずに、きっちり治療をした方が良さそうですね。
まとめ
アトピー性皮膚炎は他のアレルギー疾患のスタートになり得ます。
アトピー性皮膚炎を予防することで、食物アレルギーなど他のアレルギー疾患を防ぐことが可能かもしれません。
アトピー性皮膚炎はとにかく痒いです。そしてその痒みが様々な弊害を引き起こします。
適切なスキンケアを行い、予防・治療に努めましょう。
今日はここまで。
次回はアトピー性皮膚炎の治療についてです。
超不定期掲載ですので、気長にお待ちください。

