安全に食べるために~卵・牛乳・小麦アレルギーの克服を目指して~

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  • アレルギー
  • 2024.05.01

安全に食べるために ~卵・牛乳・小麦アレルギーの克服を目指して~

安全に食べるために ~卵・牛乳・小麦アレルギーの克服を目指して~のイメージ画像

かなり久しぶりのブログ更新となってしまいました。

しばらく鳴りを潜めていた持病のさぼり癖が再発して、かなりこじらせていました。

今一度気を引き締めて、皆さんに様々な情報をお伝えできるように頑張っていきたいと思います。

 

 

はじめに

さて、現在の食物アレルギー診療において、「必要最小限の除去」という考え方は徐々に浸透してきている印象を受けます。アレルギーがあったとしても、症状が出ない量(閾値内の量)の摂取を継続しましょうという考え方です。

症状が出ない量は負荷試験で確認して、問題ない量を自宅で摂取することが一般的ですが、それでも医者や看護師のいない自宅で摂取を行っていくことに不安を覚える方もおられると思います。そんな時に、これぐらいの量であればたいていの人は問題なく摂取できるという目安が分かれば少しは安心できるのではないでしょうか。

 

 

論文紹介

そこでまたしても日本の小児アレルギーのメッカ、国立成育医療センターからの報告のご紹介です。

 

論文は「Quantitative risk assessment of egg-white, milk and wheat in infants(Allergy. 2024;79:533-536 Kazuma Takada et al.)

乳児の鶏卵・乳・小麦のアレルギー誘発量を検討した報告です。

 

ここ20年ほどの食物アレルギー診療の進歩は目覚ましく、数々のランダム化比較試験(客観的に治療効果を評価することを目的とした研究試験の方法で信頼度が高い)の結果、食物アレルギーのリスクを減らすために、早い段階から食べだすこと(早期摂取)の重要性が唱えられるようになってきました。しかし、食物アレルギーを予防するための正確で安全、効果的な量についてはまだ不明点が多く(前回紹介した論文で少しそのヒントが記されています)、またすでに発症している児ではどのくらいの量を摂取すると症状が出るリスクがあるのかを考える必要があります。

 

 

今回の研究ではこのリスクを評価するために、成育医療センターで過去に実施された食物経口負荷試験のデータを元に調査を行い、卵白・乳・小麦の症状誘発閾値(eliciting dose ; ED)を調べています。そして、ある食品に対してすでに食物アレルギーを発症している患児のうち、全体の5%にのみ症状が誘発される摂取量(ED05)が導き出されました。

ちなみにED05はアレルギーを起こすタンパク質の量で表されるため、実際に測りとった量とは異なります。

 

結果

それではさっそく結果を見ていきましょう。

 

まず卵です。卵(固ゆで卵白)のED0528.6mgでした。固ゆで卵白のタンパク質含有率は約10.5%ですので、実際の固ゆで卵白に換算すると約0.27gということになります。

 

続いて牛乳です。乳のED056.1mgでした。牛乳のタンパク質含有率は約3.3%、つまり1mlの牛乳に33mgのタンパク質を含みます。そこから計算すると乳蛋白6.1mgは約0.18mlに相当します。

 

最後に小麦です。小麦のED0527.7mgでした。小麦の摂取を進めるときには、よく茹でうどんが用いられます。茹でうどんのタンパク質含有率は約2.6%、うどん1g26mgのタンパク質を含むことになります。つまり小麦蛋白27.7mgは茹でうどん1.1gに相当します。

 

 

具体的なイメージ

いかがでしょうか。

固ゆで卵白0.25g、牛乳0.18ml、茹でうどん1.1gと言われてどのような印象を持たれるでしょうか。
おそらくは「は?めっちゃ少ないやん!」と思われる方が大半なのではないかと思います。

参考までに固ゆで卵白1g/0.25g、茹でうどん1.1gのイメージ図です。

ゆで卵.jpg

 

 

大体1gの茹で卵白は1cm四方で厚さ7mmほどです。

うどん.jpg

茹でうどんは、今回は標準的な太さのものを使用しています。
(細うどんではありません。ちなみに論文では茹でうどんの蛋白濃度は2.6%となっていますが、私がクリニック近くのスーパーで探したときは、どのうどんも大体3%ちょっとくらいでした。)

固ゆで卵白、茹でうどんはまだ準備しやすいですが、牛乳0.18mlというのは少しハードルが高いかもしれません。

でもご安心ください。摂取は必ずしも固ゆで卵白や牛乳、茹でうどんだけで行う必要はありません。

実際の臨床の場では、市販されている加工品を用いることもよくあります。

外来でご相談いただければ、ED05に相当する具体的な加工品のご紹介も可能です。お気軽にお声がけください。 

 

 

考察

今回示されたED05というのは、食物アレルギーをすでに発症している患者さんのうち、全体の5%にのみ症状が誘発される摂取タンパク量のことで、食品安全に関するリスク評価の国際的な専門家会合において、アレルゲン含有量の参照用量として採用され、症状誘発リスクが低いとされる暴露量の目安です。あくまでも発症リスクが低いというだけで、確実に安全に摂取できる量というわけではありませんので、この点は注意が必要です。実際に100人の食物アレルギー患者さんがいれば、そのうちの5人はこの量で症状を誘発するということです。

しかし、今回ED05が具体的に示されたことで、どのくらいの量であれば比較的安全に摂取できるかという目安ができたことは大変有意義なことだと思います。

 

 

おまけ

ちなみに今回の研究の目的からは外れますが、以下のようなグラフが示されていました。

ED05.png

 

 

各食品の累積摂取量とアレルギー症状が誘発される累積確率をそれぞれ12か月以下と2歳~15歳の群に分けて比較したものです。

お気づきでしょうか?

どの食品も同じ量を食べたとき、12か月以下の方が2歳~15歳よりも症状の出る確率は低いのです。

近年、早期摂取開始の有効性が言われていますが、今回の研究からもそれが示されたことになります。

よほどの理由がない限り、卵や乳、小麦の摂取を遅らせる理由は無さそうですね。

前回のブログでも閾値の1/100量の微量摂取を行うことが食物アレルギーを予防するうえで有効と紹介しましたが、食物アレルギーを疑う場合、少量微量での摂取を考慮すべきだと思います。

 

ただし、自宅でやみくもに摂取を進めていくのは大変危険です。

すでに食物アレルギーを発症している方が摂取を行う場合や、少しでも不安がある場合は必ず医師に相談して、その指導の元で進めるようにしてください。

 

当院では月火木金の14時~16時までアレルギーの専門外来の時間を設けています。完全予約制ですが、初診の方でもご予約いただけますのでお気軽にご相談ください。